こんにちは。
豊かな食材溢れる瀬戸内海に面した、広島県福山市に佇む隠れ家料亭『一燈照隅』の元嶋です。
昨日より西日本では天候が下り坂となり、日中でも気温が冷え込み、コートやセーターを羽織られる方もおられ、本格的に冬の到来がやって参りました。
当店では年末年始に向けて、からすみやいくら、数の子や黒豆などの仕込みが始まり慌ただしくなって参りました。
さて、本日は一燈照隅のお料理の原点とも言える日本料理の歴史と、その伝統を重んじ継承していった名料亭『播半』について詳しくお話ししていきたいと思います。
【”日本料理”は、”和食”に比べて高度な技術を要する日本食】
皆さんよく日本の伝統食を言葉で表すときに、”日本料理”や”和食”と表現することがあると思います。
しかし、このどちらの言葉を意味を理解されたうえで、意識して使いわけておられる方はおられますでしょうか。
実は、明確な違いはないものの、”日本料理”と”和食”という言葉には、共通点もあり相違点もありました。
<和食と日本料理の共通点>
①多彩な食材の持ち味を尊重すること。(例:出汁、生食、シンプルな調理法、良質な水を使用した浸す、さらすなど)
②栄養バランスに富んでいること。(一汁三菜、出汁、発酵食品、カロリー調整など)
③自然や四季を意識した盛付(季節感のある器、調度品、花や葉の装飾など)
④年中行事とのかかわり(神との交流の儀式として食がある⇒おせち、年越しそば、七五三、お食い初めなど)
<和食と日本料理の相違点>
■日本料理という言葉は、
■日本料理:割烹や日本料理店などで提供される、高度な技術を要する料理
■和食:家庭料理を基礎とした日本の食文化
が挙げられるそうです。
【日本料理の歴史に触れる】
和食と日本料理の関係性について触れたところで、今度は歴史について簡単にご説明いたします。
日本料理(和食)の原点は、縄文時代にまで遡ります。土器で有名なこの時代には、土器と火を用いて人々は貝を食べていたと記されています。その後弥生時代になると、狩猟と採集が本格的に広まり、山菜やきのこ、魚といった食材を調理して食すようになりました。
飛鳥・奈良・平安時代になると、「肉食禁止令」の発令により、大豆や米で栄養を補給するようになり、その物足りなさを補うために和食特有の盛付や出汁が生まれたそうです。
鎌倉・室町時代になると、質素倹約の風習が広まり、料理に旨味を足すために味噌やゴマを加えるようになり、揚げ物料理が確立され、野菜の品質改良や茶の栽培、米の加工品である団子などが生まれました。
戦国時代になると、茶の湯文化が広まり、茶懐石といったお茶を楽しむ前の軽い食事や、南蛮料理や中国料理なども広まり、江戸時代には、寿司や天婦羅、うなぎ、そばといった料理が定着し、現代に至っています。
こうして、歴史を辿っていくと、日本料理の歴史は食材そのものを加熱するだけだったものに、満足度の向上や物足りなさを補填するために「足し算」の歴史だったと言えるのではないでしょうか。
こうして進化した日本料理(和食)は、今となってはユネスコの無形文化遺産にまで登録され、世界を代表する食文化となっています。
その日本料理を世界に広め、普及させたのには高級料亭や割烹が一役買ったことは大きいでしょう。
では、その中でも『調理師会の東大』と呼ばれ、日本料理の伝統と歴史、心意気を継承してきたかつての名料亭『播半』について、少し触れたいと思います。
【日本料理の伝統と歴史を重んじる名料亭「播半」とは】
「播半(はりはん)」は、かつて兵庫県は西宮市の高級住宅街甲陽園に佇み、一万坪の敷地の各所に佇む数寄屋造りの建造物や日本庭園は圧巻で、昭和天皇の来訪をはじめ政財界など各界著名人から愛され、北大路魯山人や谷崎潤一郎といった文化人とも歴史を歩んだ一流料亭です。
日本料理を学びたいと思う者は、こぞって門戸を叩いた。しかし、その門戸をくぐることが出来たのはほんの一握りで、その伝統技を継承する者はごくわずかだそうです。
【名料亭”播半”から学んだ日本料理から原点へと立ち返る、『究極の引き算料理』とは…】
ここまで、日本料理の歴史を辿ってきましたが、前述したように日本料理の原点は、縄文・弥生時代にさかのぼり、素材そのものを加熱するだけの料理でした。それを満足感の向上や、物足りなさの補填をするために調味料や出汁を加えるようになったのです。
一燈照隅総料理長は、その日本料理の原点と歴史を名料亭”播半”で研鑽を重ね修得しました。
現代では、化学調味料や添加物が含有されている時代に、「足し算」ではなく、素材そのものを楽しみ・味わう原点に立ち返る「引き算」に焦点を当て、「究極の引き算料理」を生み出しました。
鰹や昆布は使用せず、素材そのものから”出汁”をとり、それを再び食材に引き戻します。
そうすることで、調味料を極限まで抑えることを可能にし、お客様の体への負担を最大限減らす。
それが『究極の引き算料理』です。
また、普段日の目を見ない片隅の食材に光を当て、その食材がお客様の大切なひと時を灯すよう、日々研鑽に努めて参ります。
食材一つ一つと向き合うこと。それが、私たちの使命です。
ぜひ皆様との出会いを心より楽しみにしております。