こんにちは。
豊かな食材溢れる瀬戸内海に面した、広島県福山市に佇む隠れ家料亭『一燈照隅』の元嶋です。
11月も下旬を迎え、ここ数日は風も強く、マフラーやコートなど防寒具が欠かせなくなりました。
瀬戸内海では、海水温の低下により脂がのった魚介類が豊富に水揚げされるようになり、東京や関西などからゲストをお招きされ、当店で接待されたお客様から「瀬戸内の素晴らしい食材をゲストの方に振る舞うことができて、大変喜んでいたd買うことが出来ました」と嬉しいお言葉をよく頂いております。
さて、本日までの投稿では、日本料理の原点や歴史や伝統、テーブルマナーなど日本料理そのものにスポットを当て深掘ってきましたが、本日は少し視点を変えて、西洋料理との比較をしながら、日本料理の良さをお伝えしていきたいと思います。
【日本料理は、暦の節目や伝統行事で、神様への感謝の気持ちをお伝えするお供えものとして生まれた】
まずは、日本料理と西洋料理の比較に入る前に、少し日本料理についておさらいしたいと思います。
前々回の投稿で、日本料理の特徴は以下の4つが主に挙げられるとお話しさせて頂きました。
①多彩な食材の持ち味を尊重すること。(例:出汁、生食、シンプルな調理法、良質な水を使用した浸す、さらすなど)
②栄養バランスに富んでいること。(一汁三菜、出汁、発酵食品、カロリー調整など)
③自然や四季を意識した盛付(季節感のある器、調度品、花や葉の装飾など)
④年中行事とのかかわり(神との交流の儀式として食がある⇒おせち、年越しそば、七五三、お食い初めなど)
このように、日本料理は、唐より伝わった暦や年中行事に貴族が神様へのお供え物としてふるまわれていたものが、だんだんと時代が経過するにつれそれが一般庶民にまで広がるようになり、”日本料理”として現代まで受け継がれています。
【日本料理と西洋料理の大きな違いは、新鮮な食材がいつでもどこでも手に入れられることが大きく影響していた】
日本料理についておさらいしたところで、早速日本料理と西洋料理の違いについてお話ししていきます。
まず、日本料理と西洋料理では、料理に対する考え方が大きく異なります。
日本料理は、余計な調味料を加えずに、素材が持っている良さを活かす料理法が好まれる一方で、西洋料理は、香辛料やソースと食材の組み合わせで、繊細な味を引き出すことが挙げられるのではないでしょうか。
では、なぜ日本料理と西洋料理でこのような調理法に違いが生まれるのでしょうか。
その理由は、日本は豊かな海と山々に囲まれ、新鮮な山海の幸が豊富だからです。一方で、西洋では、気温が低い地域が多く、野菜が育ちにくいため、常に新鮮な食材が手に入るわけではありません。特に内陸部では海から距離があり、乾燥させて保存食の状態となった魚介類しか流通しない地域もありました。
そのため、どこにいても鮮度の高い食材が手に入る日本では、素材の味を活かすという考えが発展し、西洋では調味料などで味付けをして、新鮮ではない食材でも美味しく調理する文化が発展したと言えるのではないでしょうか。
【日本料理と西洋料理の違いには、季節や文化も大きく影響していた】
日本料理と西洋料理の違いには、このほかにも使用する食材や、カトラリーの違いもあります。
使用する食材の違いとしては、日本といえば、四季がはっきりとしていることから、四季に合わせた旬の食材を取り入れる文化があります。その時期に一番おいしい食材を楽しむことが特徴として挙げられます。
一方で、西洋料理にも旬の食材はありますが、国や地域によっては一年を通して寒い場所や、寒暖差が少ない場所もあるため、日本ほど旬の食材を食べる文化が発達していないところも多いのです。
カトラリーの違いでは、日本料理は箸を使い、西洋料理はフォークやナイフを使います。
箸は日本だけでなく、中国や韓国・ベトナムなどでも使用されていますが、和食と箸は特に深い関係があります。
箸は7~8世紀ころに中国から伝わりましたが、それ以前は手づかみで食事をしていました。
箸が一般家庭にも普及したことで、熱い料理や冷たい料理、小さい料理など、和食のバリエーションが増えて、和食文化が発展したと言われています。
和食は単に食べるだけでなく、目で見て楽しむものでもあります。
食材をさまざまな形状に調理して提供するので、いろいろなものを掴める箸と和食の相性はピッタリだったと言えるのではないでしょうか。
西洋料理で使用されるナイフやフォークは、19世紀後半に一般家庭に広まりました。
もともとは、貴族の間でカトラリーが広まったため、さまざまなマナーがあり、現在にも受け継がれています。
【日本料理と西洋料理の違いを理解し、改めて日本料理の心意気に立ち返る】
ここまで、日本料理と西洋料理の違いについてお話ししてきました。
それぞれが置かれる環境や歴史、文化によって育んできたものが異なってはいるものの、それぞれが持つ良さがあり、お互いの足りないところを補えるようなそんな関係性が築けるのではないでしょうか。
私たちはその役割を果たすために、日本料理の原点でもある”素材を生かす調理法”に焦点を当て、日本料理の原点でもある”出汁”に最もこだわり、素材そのものから出汁を取り、それをふたたびその食材へと引き戻す『究極の引き算料理』を用いることで、素材の本来持つ旨味・甘みを最大限引き出し、調味料を極限まで抑えます。
そうすることで、お客様への体への負担をやわらげ、食事制限のある方や体調のすぐれないお客様にも幸せなひとときをお届けできるそんな一生に一度のコースに仕上げます。
体験した方だからこそわかる「味の向こう側」をぜひご堪能下さい。